本作品は、昭和20年8月16日の満州が舞台となっています。御存知と思いますが、
  既に現在満州という国家は存在しません。当時の満州国は現在の中華人民共和国
  東北部及び内モンゴル自治区北東部に、1932年から1945年の13年間だけ存在した
  国家です。その建国には日本の関東軍が大きく係わっていました。今日では、満州国
  を日本本土及び当時支配下だった朝鮮半島の防衛と、大陸での利権確保のために作
  った傀儡国家と見なすのが一般的で、満州国そのものは第二次世界大戦(大東亜戦
  争)での日本の敗戦とともに消滅した短命な国家でした。
  
   今回の作品に登場する兵士たちは、上記の関東軍に属しています。ただし、関東軍
  と言っても日本の関東地方で編成されたのではありません。南満州鉄道付属地警備
  を目的とした守備隊が前身で、その名称は警備地の関東州に由来するものです。
   この関東軍は、中国を相手に8年間も戦争を続けた事は有名で、最盛期には無敵関
  東軍の名を欲しいままにし、満州に多大な兵力を駐在させるようになりました。しかし、
  太平洋戦争が勃発してからは、それまで満州守備に当たっていた精鋭部隊を南方戦
  線に派遣するようになってしまい、その穴埋めの窮余の策として、現地日本人の高齢
  者や就業者を無差別に徴兵し、その兵力増強に充てたのでした。
   関東軍の思惑としては、中国共産党軍、中国国民党軍(華北部で活動しゲリラ戦を
  得意した組織を八路軍と言う)、そしていつ侵攻してくるか知 れないソ連軍の驚異か
  ら満州を防衛する為、兵力増強は必須の思惑だったのでした。
  
   昭和20年8月9日、ソ連軍は何の予告も無しに国境を侵し、怒濤の勢いで満州に侵
  入してきました。ソ連の電撃的侵略を食い止める事の不可能を悟った関東軍上層部
  は、朝鮮国境付近に最後の防衛網構築を決定し、その結果、邦人や開拓団民を見捨
  てるような状況になってしまい、多くの悲劇を現出させたのでした。その後、ソ連軍 の
  前に総崩れとなった日本の将校は、ソ連軍や中国共産党軍、国民党軍の捕虜となり、
  悲惨な運命を辿ったことは歴史的事実であります。
  。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

   軍隊には階級があります。下から二等兵、一等兵、上等兵、兵長。ここまでが俗にいう
  兵隊 もしくは兵士となりますが、伍長、軍曹、曹長は下士官と言われ、分隊を指揮した
  り、小隊長の補佐、内務の段取りなどに従事します。この上に、小隊や中隊を指揮する
  尉官職があり、一般的に士官と言われています。少尉、中尉、大尉といった階級です。
  更にそれらを統括する大隊やその大元になる連隊を統括する佐官の少佐、中佐、大佐
  も士官と呼ばれます。更にその上には、連隊や師団や軍団を統括する少将、中将、大
  将という雲の上の存在が命令の発信元として存在します。尚、天皇陛下は元帥であり、
  大元帥陛下と称されました。また、陸軍は兵科も多岐に分れ、歩兵、砲兵、工兵、衛生
  、通信、航空、輜重、経理など、それぞれが上述の階級によってその役割分担を任とし
  ておりました。

   また、これらとは別に「憲兵隊」という職がありました。この憲兵隊は軍隊内の警察機
  構であって、銃を担いで戦場で戦う類のものではありません。いわば、軍規に背く兵士
  や士官、思想の異なる者を取り締まったり、民間人と軍人の癒着を防止するなど、その
  権力はかなりのものでした。当然、憲兵にも階級は存在しますが、兵士の階級はなく、
  伍長から進級する形式でした。


陸軍兵科の階級
憲兵
元帥陸軍大将
方面軍司令官 陸軍大将 将官
軍司令官
師団長

各種学校長
陸軍中将
旅団長
各種学校長
陸軍少将
歩兵連隊長 陸軍大佐 陸軍憲兵大佐 佐官
騎兵連隊長
戦車連隊長

飛行戦隊長
陸軍中佐 陸軍憲兵中佐
大隊長
飛行戦隊長
陸軍少佐 陸軍憲兵少佐
中隊長 陸軍大尉 陸軍憲兵大尉 尉官
中隊長
小隊長
連隊旗手
陸軍中尉 陸軍憲兵中尉
小隊長
連隊旗手
陸軍少尉 陸軍憲兵少尉
陸軍准尉 陸軍憲兵准尉 准士官
陸軍曹長 陸軍憲兵曹長 下士官
部隊長 陸軍軍曹 陸軍憲兵軍曹
分隊長 陸軍伍長 陸軍憲兵伍長
陸軍兵長
陸軍上等兵
陸軍一等兵
陸軍二等兵